小さめ美術館の森|東京 現代アート最新情報

田口恵子 個展 | emergence

展示作品

「red dahlia」

 

「花菖蒲」

 

「もみじ」

 

「Black dahlia」

 

「入り日」

 

「南天」

 

「山葡萄」

 

「wisteria」

 

「wisteria」(アップ)

 

解説・鑑賞後記

2017年10月から開催された、田口恵子(タグチケイコ)氏の個展です。展示タイトル「emergence」には、「羽化」という意味があります。羽化とは昆虫が成虫になる成長過程のことであり、日々制作を続ける中で作家としての前進、歩みを信じるという意味が込められています。氏は2010年ごろから公募展・グループ展などに多数出展し、2013年から毎年10月に個展を開催しています。10年ほど前から作品制作に銀を用い、初期の頃は部分的に張り付けたり、硫黄を使って硫化させるといった手法を使っていました。そして6年ほど前から絵画全面に銀箔を張り付ける表現を行い、本展の作品も全てそのように制作されています。

浮かび上がるような立体感のある植物は、ジェッソ(下地材)を用いて縁取るように盛り上がりがつけられ、その上から銀箔を張り彩色することによって表現されています。風に揺れて雫をしたたらせ、手を伸ばせば持ち上げられそうなほどありありとした植物たちは、間近で見ると思いのほか厚みが薄く均一であることに驚きます。

その一方で、下記「wisteria」のようにモチーフ全体を立体的に表現した作品では、大胆に隆起した表面が荒々しい岩肌のように目に映ります。

「wisteria」(アップ)

 

花びら、葉、ツルなど、モチーフを構成する一つ一つは、まるでそれ自体が光を放つようで、繊細な色付けが信じられないほどの瑞々しさをもたらしています。深みのある独特の背景は、ひっそりとした日本的な上品さを漂わせながら、しっとりとした空気さえ感じさせるようです。

「金のように色がなく、周りの景色を映す。そのためどのような物にでも合う」氏は銀の魅力をこのように話します。本来銀箔は金属的で無機質な光沢があります。しかし氏は本来の質感をそのままにはせず、常に何かを重ねることによって、他にはない静謐とした世界を表現しています。

金属と植物とは、相容れない対照的な存在のように感じます。しかし氏の作品においては、絵画という限られた領域の中でお互いが魅力を際立たせ、補い合い、寸分の違和感もなく作品として融合しています。

平面であることを忘れさせ、果てしない奥行を感じさせる背景。その中にごく自然に置かれた、視線を引き寄せて離さない印象的な植物。実際の盛り上がり以上に立体感をもたらす陰影表現や、下記「red dahlia」などに見られる光を帯びるようなグラデーションは、独自の表現を突き詰めた氏ならではの高度な技術を感じます。

「red dahlia」

 

氏は近年、作風が大きく変化したと話します。SNSなどで過去の作品を見ると、色数が多くモチーフの絵としての主張が、現在より強固であるように感じました。今回の展示のように、深遠とした背景の中でしっとりと佇む雰囲気とは、また違った魅力があります。

今後さらに変化を重ねていくのか、現在の作風がより突き詰められ、洗練されていくのか。これからの展示が楽しみで仕方ありません。

展示情報

展示名:emergence
作家:田口恵子 | フェイスブック
期間:2017年10月17日(火)~10月22日(日)

展示場所:アートコンプレックスセンター(新宿)
最寄り駅:信濃町

所在地:東京都新宿区大京町12−9

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