小さめ美術館の森

ninko ouzou 個展 | Re: 記臆 -おくすることなくしるす-

展示作品

「carpe-diem -むすびめめんともり-」

 

「共に在る / 改」

「/ 改」と付くものは氏の作品シリーズの1つで、一度完成させた絵画に過去の作品(絵画、ドローイング、言葉など)を重ねて、新たに描いたものです。
間近で見ると、当時の言葉や線がうっすらと浮かび上がっており、複数の素材が重ねられていることが分かります。

左「忘れちゃってよかったのね? / 改」右「はなとばくだん。/ 改」

 

左「受け入れるココロとカラダとキオク(2017)」 右「受け入れる心と身体(2005)」

左の作品は、右の作品のオマージュとして描かれた新作です。
タッチや描きこみ、娘の造形など12年の間の作品の変化が感じられます。

「うつろい。」

 

氏が日々描いているというドローイング作品には、一つ一つ言葉が添えられています。
これら多くの中から、彩色される作品が選ばれます。

「鉢植え小僧」

鉢植え小僧は2001年に生まれた作品ですがここ数年は展示していなかったものです。
今回の展示では過去の作品とも向き合う、今のお客様に知ってもらう意味もこめて久しぶりに展示販売されました。

モニターでは写真家・岩切等(I)、踊り子・牧瀬茜(M)、えがきびと・ninko ouzou(O)による
アートパフォーマンスユニットのShowの様子が映されています。

解説・鑑賞後記

2017年10月に開催された、ninko ouzou(ニンコ オウゾウ)氏の絵画展です。展示名「Re: 記臆」には「臆する事なく 記していきたい。」という意味があり、通り過ぎた記憶・過去の産物が未来への力になると信じて臆さずに表現を行う。という想いが込められています。氏は20年近く前から、オリジナルキャラクターをモチーフとした絵画を描き続けています。近年では毎年10月ごろに個展を開催し、様々なアーティストとのコラボレーションなども行っています。

また2011年ごろからは、アートパフォーマンスユニット「I.M.O」のメンバーとしても活動しており、ライブペイントなど様々なパフォーマンスを行っています。ストリッパーの人体に彩色する人体ペイントでは、抽象画を主に描いています。

氏が描くのは、女性(少女)、キャラクターをモチーフにしたもの、時に抽象的なものですが、現在まで一貫として描き続けているものは2002年頃に誕生した「娘(MUSUME)」と呼ばれるキャラクターです。15年以上の時を経る中で、造形やタッチは様々な変化を迎えていますが基本的なデザインは変わっていません。

性別のない小僧(娘と対比されて男と思われることが多い)は、シンプルを突き詰めた記号のような表情を見せます。その顔つきは性別はおろか感情さえうかがわせませんが、どこかとぼけた上の空のような視線が親しみを感じさせます。時代を匂わせない洗練された造形は、かわいらしい一方で不変という安心をもたらすようです。

その一方で娘は時に「痛み」や「性」を漂わせながら、情緒豊かな表現で描かれます。氏の思春期の頃の想い、当時から残り続けている想い、現在の想い。これらが混ざり合い、キャンバスの上に表現されています。

大胆にデフォルメされた巨大な空洞のような目。何かを言いかけるような印象的な口元。この特徴的な造形は、胸の内側からにじみ出る想いを生々しく物語る器のようであり、まるみを帯びた姿の中で果てしなくうずまいている何かを感じずにはいられません。

目にはひとみ以外にも、様々な形が色彩豊かに描かれています。あふれ出る感情が唯一形となって姿を現す場所。それは強く訴えるようでありながら、無力感にあえぐようでもあり、思春期のやり場のなさと若干の自己陶酔感がにじみ出るような、針のように鋭くも美しい表現だと感じました。

背景の複雑な色合いは、氏の幼いころからの様々な感情が透けて重なっているようで、ファンシーさと退廃的な荒々しい筆致を併せ持っています。また「改」という作品は、氏のむき出しの過去である言葉やドローイングの断片が、キャンバスの奥に浮かび上がっています。氏の人生そのものを一枚の上に階層的に積み上げたようで、とても興味深く魅力的な表現でした。

私たちは今を生きています。しかしそれは過去や記憶とは切って離せないもので、自身の歴史の上に現在の自分が存在しているということです。過去と向き合うことは時に苦しく勇気が必要ですが、それを様々な形にして表すことは、今に活き未来へ進む糧になる。表現、芸術とはそんな力を持った唯一のものなのだと、実感させられる展示でした。

展示情報

展示名:Re: 記臆 -おくすることなくしるす-
作家:ninko ouzou | ブログフェイスブックツイッターウェブサイト(現在未更新 | 過去作品が見られます)
I.M.O.(アートパフォーマンスユニット )| フェイスブック
期間:2017年10月17日(火)~10月22日(日)

展示場所:アートコンプレックスセンター(新宿)
最寄り駅:信濃町

所在地:東京都新宿区大京町12−9

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