小さめ美術館の森|東京 現代アート最新情報

神田正信 個展 | 顔 -FACE-

展示作品

「採耳記」

 

「ふたつとない幸福」

 

「花はどこへいった」

 

「軽い胸さわぎ」

 

「哲学者」

 

「私的回想」

 

解説・鑑賞後記

2017年10月14日(土)から銀座 青木画廊LUFTで開催された、神田正信(カンダマサノブ)氏の絵画展です。氏は2009年に青木画廊LUFTで個展「密ヤカナル夜会ノ始マリ」を開催し、本展示はそれ以来8年ぶりの個展となります。展示名の通り、「顔」をテーマとした作品が出展されます。

氏は30年ほど前から独学で絵画制作(油彩)をはじめ、90年代半ばから東京を中心に展示活動を行ってきました。2013年には、寺院「龍池山 蓮華寺 慈眼院」の天井画「鳳凰黄龍出現之図」を奉納し、現在は青森県青森市にアトリエを構えています。

「鳳凰黄龍出現之図」出展:龍池山蓮華寺慈眼院 ウェブサイト

 

氏は初期の頃はデフォルメされた静物画を描いていましたが、次第に内面に迫るような作風に変化を遂げてゆきます。今回の「顔」というテーマは氏が2年ほど前から題材にしているもので、人の胸の内に生まれる様々な感情が表現されています。内面を描くという方向に変化を遂げた氏の、現在の到達点と言えるかもしれません。

本展示の作品は全て油絵具とテンペラ乳剤の混成で描かれています。テンペラ乳剤とは、西洋絵画技法において知られるテンペラ絵具の原料に、卵黄などを混ぜたものです。氏は7年ほど前から、この技法で作品制作を行っています。

通常の油彩とは異なる、奥行きのある上品な色合いは非常に独特で魅力的です。ざらついたようなタッチや、印象深い陰影表現は古めかしさを匂わせており、精神的な深い世界を内包しているように感じます。

丸々と描かれた人物たちは、キャンバスから浮き出て来るよう。彼らのすんとした表情を見ていると、何か心象的なアイコンであるかのような、肥満体というより生まれた時から既にその姿だったのではないか、などと想像をかき立てます。

氏は丸みを帯びた形は描きやすいと話します。肥満は不健康の象徴のように語られることもありますが、絵の中の彼らはそんなことは気にしたこともない。と落ち着き払っているようで、飄々としているようにさえ感じられます。

一見すると彼らはみな似たような表情に見えますが、作品にはそれぞれストーリーが込められています。例えば「軽い胸さわぎ」という作品には、脳内の鳥かごに潜んでいた鳥が、やがて解放されたように飛び立っていく。その後には、また新たな鳥が住み家としてやってくる……。といった背景があり、流動的な情緒が表現されています。

言葉や表情では表し尽くせない、感情が渦巻く内面的な世界が、一見するとデフォルメされたような絵の中には詰められているのです。

彼らの物言わずたたずむ様子は、どこかどんよりとした雰囲気があり、陰りがあるようにさえ目に映ります。そして目・鼻・口など、顔を構成するパーツが異様に小さく描かれていますが、氏はそれらについては意識的に行っている訳ではないと話します。

人物を描くにあたって唯一意識していること、それは彼らが男でも女でもない「中性的な存在」である、ということです。それ以外に関しては、自らの気の向くままに自由に描いています。

氏は今後も「顔」をテーマに作品制作を行うと言います。これから生まれる「顔」たちには、どのような感情が込められ、どのようなストーリーが与えられるのか。彼らの表情が緩んだり、しかめられたりはする事はあるのか。

そんな思いに溢れてしまう私の胸の内には、いつの間にか彼らが住み着いてしまったのかもしれません。彼らの静謐とした視線がいつまでも胸に残るような、そんな忘れられない展示でした。

展示情報

展示名:顔 -FACE-
作家:神田正信(カンダマサノブ)
期間:2017年10月14日(土)~10月21日(土)

展示場所:青木画廊LUFT(銀座)
最寄り駅:有楽町、銀座、銀座一丁目

所在地:東京都中央区銀座3-5-16 島田ビル2F・3F

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