小さめ美術館の森

新宅和音 個展 | 春から夏へ

展示作品

「音楽の侍童」

 

「Princess」

 

「有紀子の地図」

 

 

鑑賞後記

東京都中央区 みうらじろうギャラリーで2017年8月25日(金)から開催された、新宅和音(シンタクカズネ)氏の個展です。氏は1986年生まれで、大分県に在住しています。若い生命力を尊敬し、油彩により思春期の少女を描いています。2012年頃から積極的に展示活動を行い、多数の作品を発表しています。現在は市役所の非常勤職員として勤めるかたわら、大分県別府市を拠点に活動を行っています。

大きく見開かれた印象的な目元、日に焼けたような色の濃い肌、痛々しく血を滴らせる傷。幻想的な背景が少女たちの不安定な内面を表しているのだとすれば、訴えるような力強い視線は、境界を超えて外に向けられた溢れるほどの想いなのでしょうか。

胸を貫くような据わった眼差し。しかしその光は、孤独や未来に対する不安や恐れ、大人たちと相容れず嫌悪する一方、思春期の煩わしさゆえに成長を夢見てしまう。そんな不安定な年頃ゆえの、形容しがたい複雑な感情が込められているかのようです。

全身から瑞々しさを放出するような、健康的な肌をした美しい少女たち。しかしそのような見方は極めて表層的なものでしかなく、生々しい吹き出物や自傷跡などが示しているように、行き場のない様々な想いがぎりぎりのところで均衡を保っているような、そんな張り詰めた息苦しさが込められているように感じます。

性や若さに向けられる社会の押し付けがましい意見は、しばしば個性を無視し、暴力性さえはらむことがあります。そんな世の中の不条理にぶつかり、強大な力に打ちのめされながらも、自分を見失わないようにもがき続ける。

絵画と写真の狭間のような鮮烈なタッチはそんな胸の内を映しているようで、いつまでも見つめていたいという心揺さぶられるような魅力を感じる一方、自らが彼女たちを縛り付けている大人という存在である、という現実を直視させられるような、後ろめたさを思わずにはいられません。

きらめく瞳の向こう側で、光が届かないほどの胸の奥深くで、彼女たちは痛みを伴いながら何を訴えるのか。若さがもたらす迸るような生命力。まぶしいほどに輝いて見えるその一方で、痛みや苦しみが常に存在することを思い知らされるような展示でした。

展示情報

展示名:春から夏へ
作家:新宅和音
期間:2017年8月25日(金)~9月10日(日)

展示場所:みうらじろうギャラリー
最寄り駅:東京メトロ日比谷線 小伝馬町駅

所在地:〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町2-5 石倉ビル4階

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